皆さんも、「胸が苦しい」と感じたことはありますか?
多くの人が、程度の差こそあれ、「胸が苦しい」と感じたことがあるかと思います。
胸が苦しくなる原因は、ストレスや疲れからくる危険性が低いものから、心筋梗塞のように命にかかわるものまで、さまざまな原因があります。
今回は、もし胸が苦しい症状が出てきた場合にどのように考えたらよいか、どのような病気の可能性があるかをお話します。
〇目次
1:どのような胸痛か?
原因や緊急性を判断する際には、まずどのような胸痛かを把握することが重要です。
①症状はいつから出現したか
②痛い場所はどこか
③どんな痛みか
④増悪・改善する要因はあるか
⑤持続時間
といった点が非常に重要となるため、それぞれの要点を解説します。
①症状はいつから出現したか
症状が突然出現したのか、数時間前、数日前の症状なのか、という発症時期の評価です。
突然発症した急性発症の強い胸痛の場合には緊急性が高いものが多くなり、徐々に痛くなる・だいぶ前から時々痛みがある、という場合には緊急性はやや下がる事が多くなります。
②痛い場所はどこか
痛む場所によって疑う病気も変わってきます。胸全体が痛い、左、右が痛い、など具体的な場所を教えられると良いでしょう。難しければこのあたり、と自分で触って伝えるでも良いです。また、胸だけでなく背中まで痛い、首や顎も苦しい、など他の部位の痛みを伴う場合には、それも伝えられるようにしてください。これも病気を特定するうえでは非常に大切な情報です。
③どんな胸痛か
一口に胸痛と言っても痛み方はいろいろあります。刺すように痛い、重苦しい、締め付けられる、ちくちくする、圧迫感を感じるなど、自分がどのように感じるかを伝えられるようにしましょう。原因となる疾患により特徴的な痛み方があるため、この情報は非常に重要です。
④増悪・改善する要因はあるか
息を吸うとひどい、運動すると出現する、などこれをするとひどくなる、逆にこれをすると楽になる、といった事があれば伝えてください。
⑤持続時間
症状がずっと持続するのか、そうでなければ何分くらい持続したのか、波があるのか、1回だけだったのか、といった症状の持続時間も大切な情報となるためお伝えください。
2:胸痛の原因となる病気
胸の痛みの原因は様々な病気があります。
中でも心臓や肺、血管の病気は命に関わる事もあるため、非常に危険です。
命に関わる危険な疾患としては、
・心筋梗塞
・肺塞栓
・大動脈解離
があります。
これらの疾患で生じる胸痛は突然発症する事が多いです。痛みも非常に強く、冷や汗等を伴って倒れてしまう、動けなくなってしまう事も多く、中には突然心停止に至ってしまう場合もあります。
それ以外の原因としては、
・心疾患:心膜炎、心筋炎、狭心症
・肺疾患:気胸、肺炎、胸膜炎
・消化器疾患:胃・食道炎、逆流性食道炎、胃・食道潰瘍、消化管穿孔
・筋骨格系:筋肉痛、骨折
・皮膚疾患:帯状疱疹、神経痛
・心因性:ストレス性の胸痛、心因性胸痛、帯状疱疹
等があります。
基本的にはさきに述べた3つの疾患より緊急性が低いですが、重症度が高い・放置していた場合には致命的になる事もあるため、注意が必要です。
3:緊急性の判断
原因疾患によっては1分1秒を争うような緊急性が高い疾患が原因の事もあるため、急を要するかどうかをある程度判断できると良いです。
緊急で受診を検討したほうがよい場合
・突然の激痛(動けないくらい痛い)
・急な息切れ、呼吸困難
・意識が飛ぶ、飛びそう
・胸や背中、肩にかけて裂けるように痛い
緊急ではないが受診を考えたほうがよい場合
・生活に支障が出ている
・初めて自覚するような痛みがある
ような時は、そこまで強い痛みでないとしても、緊急性の高い病気の前兆であることがありますので一度受診を検討するとよいでしょう。
4:日常生活の中でできる対策
胸痛は様々な原因がありますが、中には日常生活の改善でなりにくくできるものもあります。
心血管疾患(心筋梗塞や狭心症、大動脈解離等)
動脈硬化を予防するために、日常的な生活習慣の改善に努めましょう。
バランスのよい食事を心がけ、日常的に適度な運動を行い、日頃から十分な睡眠をとることが大切です。
喫煙習慣のある方は禁煙に取り組み、お酒を飲まれる方は過度の飲酒を避けるようにしましょう。
肺疾患(気胸、肺炎等)
肺への負担をなくすため、喫煙の習慣がある方は禁煙に努めることが大切です。
また、ワクチン接種は定期的に受けるようにし、肺炎などに発展しやすい感染症(肺炎球菌やインフルエンザワクチンなど)にかかりにくい状態にしておきましょう。
消化器疾患(胃・食道炎、潰瘍など)
過度のアルコールや刺激物の摂取、暴飲暴食などを避け、消化器に負担をかけないことが大切です。
また、ストレスも症状を悪化させるため、なるべく避けることが望ましいです。
医療機関で処方された痛み止め(NSAIDS)は、きちんと定められた通りに飲むようにしましょう。
5:まとめ
このように様々な疾患が原因で胸痛が引き起こされるため、どんな胸痛が危ないかを理解していただき、適切に対応する必要があります。
基本的には、
①症状が強くて動けないくらいなら救急要請
②それ以外でも今までない症状が出てきているのであれば一度受診は検討する
という事が大切となりますので、覚えて頂ければと思います。